
必要な情報
本チュートリアル内で使用する主な機能
文字ツール、定規、レイヤー、クリッピングマスク、整列、文字設定、Adobe Fonts、文字タッチツール、パス上文字ツール、エンベロープ、ペンツール、アピアランス、パターン、PDF書き出し

日ごろ目にする商業用のチラシやポスターは、その多くがIllustratorを使って制作されています。その理由は、Illustratorはデザイン専用のソフトとして開発されており、一般的な文書作成ソフトにはない下記のような特徴をもっているためです。
- 自由度の高いレイアウト:Illustratorはレイアウトの制限がほとんどなく、ドキュメント上の好きな場所に画像や文字を自由に配置できます。
- 書籍レベルの文字設定:一文字/一行単位のきめ細かな文字/段落の設定が行えるため、より読みやすいように文字を組んでいくことができます。
- レイヤー:画像や文字、イラストなどの要素を階層別に管理できるため、特定のオブジェクトの選択や編集がしやすく、オブジェクトの重なり順を簡単に変更できます。
- 高解像度:Illustratorで作成するアートワークは解像度に依存せず、どんなサイズでも美しく鮮明に表示、印刷することができます。一般的な文書作成ソフトは標準解像度が低く設定されているため、出力サイズによってはジャギーやボケが生じることがあります。
- CMYKカラーモード:Illustratorは通常の印刷で用いられるCMYKカラーモードに対応しています。一般的な文書作成ソフトはRGBモードのみのため、PC画面で見る色とは異なる色で印刷されます。
1-1 新規ドキュメントを作成する
Illustratorでは、新規ドキュメントを作成する際に、プリセットから用途に応じた仕様やサイズを選択することができます。ここでは、印刷用に最適化されたA4サイズのドキュメントを作成します。
- Illustratorを起動し、ホーム画面の「新規作成」をクリックします
- 「新規ドキュメント」ウィンドウが表示されたら、「印刷」タブを選択します
- 空のドキュメントプリセットから「A4」を選択します。
- 右側の「プリセットの詳細」パネルで、サイズやページ数を確認します。詳細オプションを展開し、カラーモードが「CMYKカラー」、ラスタライズ効果が「高解像度(300ppi)」であることを確認したら、「作成」をクリックします

ヒント:
ドキュメントの外側に赤いガイド線が表示されますが、これは「裁ち落とし」と呼ばれる領域で、紙の断裁時のズレによる白い余白が出ないようにするため、仕上がりサイズ(ここではA4)よりも天地左右3mm大きく印刷領域を広げます。
1-2 レイヤーを作成する
レイヤーは透明なフィルムのようなもので、台紙の上に何枚でも重ねて、画像やタイトル、図版などの要素を個別に配置することができます。特定のレイヤー上の要素だけに効果を加えたり、非表示にして見えなくしたり、レイヤーの順番を入れ替えてオブジェクトの重なり順を変更できるなど、作業がしやすくなります。


1-3 マージンを作成する
ドキュメントの周囲に適度な余白(マージン)を設けることで、全体がすっきりとして見やすい印象になります。ここでは、ドキュメントの周囲に10mmの余白を設定します。
- 「ガイド」レイヤーが選択されていることを確認します
- [表示 > 定規 > 定規を表示]を選択すると、画面の左と上に定規が表示されます
- 左の定規をクリックして右にドラッグすると垂直のガイド線が、上の定規から下にドラッグすると水平のガイド線が引き出されます。垂直および水平のガイドをそれぞれ定規の目盛り10mmの位置に配置します
- 2本のガイド線を選択します。[オブジェクト > 変形 > 回転]を選択し、ダイアログボックスで角度を「180°」に設定し、「コピー」をクリックします。これで上下左右から10mm内側に入ったガイド線が作成されました

1-4 レイアウトグリッドを作成する
レイアウトを始める前に、あらかじめ各要素(画像、タイトル、情報など)の位置やボリュームを決めておくと、レイアウトがしやすくなります。長方形の囲みを作成して、各要素を配置するエリアを決めていきましょう。

- 長方形ツールを選択し、ドキュメントの上半分を占めるようにドラッグして長方形を作成します。これが「メイン画像&タイトル」のエリアになります
- 同じように「商品画像」と「情報」のエリアを作成します。各要素の間には適度な余白を設定しておきましょう
- 作成した3つの長方形を選択し、[表示 > ガイド > ガイドを作成]を選択すると、長方形がガイド線に変更されます。ガイド線は後から変更することもできます

2-1 メイン画像を配置する
それではレイアウトに取り掛かりましょう。まずはチラシのイメージを左右する、メイン画像を配置します。
- レイヤーパネルで新規レイヤーを作成し、レイヤー名を「メイン画像」と入力します
- [ファイル > 配置]を選択し、練習用ファイルの「main_image.jpg」またはご自分の好きな画像ファイルを選んで「配置」クリックします
- ドキュメント上の「メイン画像&タイトル」エリアをひと回り大きく囲むようにドラッグして、画像を配置します。選択ツールで画像の位置や大きさを調整します

- 楕円形ツールを選択し、Shiftキーを押しながら、円の下の部分が画像にかかるくらいに大きな正円を描きます
- 円と画像の両方を選択し、[オブジェクト > クリッピングマスク > 作成]を選択すると、画像の下の部分が円の弧に沿って切り抜かれます
- 画像の表示範囲を調整するには、[オブジェクト > クリッピング > オブジェクトを編集」を選択し、画像を移動したり大きさを変更したりします

2-3 複数の画像を均等に配置する
次に、イベントで販売される商品の画像を配置していきます。ここでは、4つの円形の画像を配置しますが、まず初めに4つの円を描いて均等の大きさと間隔で整列させます。
- レイヤーパネルで新規レイヤーを作成し、レイヤー名を「商品画像」と入力します
- 楕円形ツールを選択し、「商品画像」エリアでSiftキーを押しながら1つの正円を描きます
- 円を選択した状態で、Alt(Windows)キーまたはOption(Mac)キーを押しながらドラッグし、3つの円を複製して横一列に並べます
- 4つの円のうち、一番左の円を左のガイド線に、一番右の円を右のガイド線に沿って配置します
- 4つの円を全て選択し、画面上部のコントロールパネルにある「垂直方向中央に整列」をクリックし、さらに「水平方向中央に分布」をクリックすると全ての円が均等に配置されます

2-4 図形の中に画像を配置する
2-2で画像を円などの図形で切り抜く方法としてクリッピングマスクを説明しましたが、ここでは図形の中に直接画像を配置するやり方を説明します。
- 一番左の円を選択し、ツールパネルの「内側描画」をクリックします
- [ファイル > 配置]から練習用ファイル「food_image_01.jpg」を選択します
- 円の上でクリックまたはドラッグすると、円の中に画像が配置されます
- 同じように残り3つの円にも画像(02〜03)を配置していきます
- 画像の表示範囲を調整するには、[オブジェクト > クリッピング > オブジェクトを編集」を選択し、画像を移動したり大きさを変更したりします

3-1 文字を入力、調整する
Illustratorでは、ドキュメント上のどんな場所にも文字を入力し、自由に移動したり、変形したりすることができます。また、文字と文字の間隔を調整するカーニングや、選択したテキスト全体の文字間隔を調整するトラッキング、文字ツメやアキといった書籍レベルのきめ細かな文字設定が行えます。
- レイヤーパネルで新規レイヤーを作成し、レイヤー名を「タイトル」と入力します
- ツールパネルから「文字ツール」を選択し、ドキュメント上でクリックするとダミーテキストが作成されます
- ダミーテキストをタイトル文字に打ち替えます。ここでは、「47都道府県」「美味しいもの」「マルシェ」のタイトルテキストを個別に作成します。
- [ウィンドウ > 書式 > 文字]を選択して「文字」パネルを開き、フォントサイズや文字間隔などの調整を行います。
- 文字の色は、コントロールパネルまたは「カラー」パネル(ウィンドウ > カラー)の「塗り」と「線」で設定できます。

3-2 フォントを選ぶ
作成したテキストにフォントを設定します。PCにインストールされたフォント以外にも、Adobe Fontsサービスを利用すれば、15,000種以上の高品質な欧文・和文フォントを使用できます。Creative Cloudメンバーであれば、追加費用はかかりません。
- タイトルテキストを選択した状態で、[ウィンドウ > 書式 > 文字] を選択して「文字」パネルを表示します
- フォントファミリを設定」の右にある「V」をクリックし、フォントメニューを表示します
- 「さらに検索」をクリックすると、Adobe Fontsのフォントが表示されます
- 気に入ったフォントを選択し、右側の雲マークをクリックします
- フォントがアクティベートされ、使用できるようになります

3-3 テキストを変形する
プリセットから選ぶだけで、テキストを円弧、弦、波形など様々な形状に変形することができます。変形後もテキストの情報は保持されるので、文字を打ち替えたり、文字間隔を調整したりできます。
- テキストの「47都道府県」を選択し、コントロールパネルの「エンベロープを作成」をクリックします
- 「ワープオプション」ダイアログが表示されるので、プレビューにチェックを入れます
- スタイルから「円弧」を選択し、ドキュメン上のテキストを確認しながら「カーブ」スライダーで曲がり具合を調整します
- 「美味しいもの」テキストも同じように変形します

3-4 テキストの文字を個別に編集する
Illustratorでは、作成したテキストを一文字ずつ個別に選択して、拡大・縮小、移動、回転することができます。元のテキスト情報は保持されたまままなので、いつでも文字の打ち替えや調整が可能です。
- テキストの「マルシェ」を選択して、ツールパネルから「文字ツール」を長押しし、「文字タッチツール」を選択します
- テキスト上の一文字をクリックするとバウンディングボックスが表示されるので、ボックスをドラッグして上下左右に移動したり、四隅のハンドルで拡大・縮小したり、上のハンドルで回転したりできます

3-5 パス上にテキストを配置する
Illustratorで描画する直線や曲線は通常「パス」と呼ばれます。このパスの形状に沿って文字を入力することができます。ここでは、4つの商品画像の円の周りにテキストを配置してみます。
- レイヤーパネルで「商品画像」レイヤーを選択します
- ツールパネルから「ダイレクト選択ツール」を選択し、円の縁をクリックします。円の中心と上下左右に白い四角(アンカーポイントといいます)が表示されるので、中心のポイントをクリックすると、全てのポイントが黒くなります。これは円全体が選択された状態を意味します
- この状態で、Control + Cキー(Windows)またはCommand + Cキー(Mac)を押してコピーします
- 続けてControl + F(Windows)またはCommand + F(Mac)を押します。コピーした円が同じ位置の前面にペーストされます
- その状態のまま[オブジェクト > 変形 > 拡大・縮小]を選択し、ダイアログボックスで「縦横比を固定」のを「110%」にして「OK」をクリックします。円形の画像の上に少し大きな円が配置されます
- ツールパネルから「文字ツール」を長押しし、「パス上文字ツール」を選択します
- 作成した円の縁にカーソルを乗せると「パス」と表示されるので、そこでクリックします。ダミーテキストが円に沿って配置されます
- 文字を打ち替えて、フォントや文字間隔などを調整します。テキストの先頭にあるバーをドラッグすると、テキストの位置を変更できます

4-1 地図の画像を読み込む
会場周辺の地図を入れてみましょう。地図サイトなどから地図の画像をキャプチャーし、ドキュメントに配置します。
- レイヤーパネルで新規レイヤーを作成し、レイヤー名を「地図元」と入力します
- [ファイル > 配置]を選択し、地図サイトからキャプチャーした画像を配置します
- 地図を配置するスペースを長方形で囲み、下にある地図と一緒に選択してクリッピンマスクを作成します(2-4を参照)
- 駅から会場までの道筋がわかるくらいに地図の位置と大きさを調整します

4-2 地図をトレースする
配置した地図は細かすぎてわかりづらいので、駅、線路、道路、川、会場といった主要な要素だけを描き起こします。画像を下絵にして、Illustratorのペンツールでトレース(なぞり描き)します。
- レイヤーパネルで新規レイヤーを作成し、レイヤー名を「地図」と入力します
- まず道路をトレースします。ツールパネルから「ペンツール」を選択し、コントロールパネルの「線」をクリックして「グレー」を選びます。次に「線幅」を「4pt」に設定します
- 地図の道路に沿って、カーブや曲がり角ごとにクリックしていきます。クリックした場所に点(アンカーポイント)が打たれ、点と点の間に線が描かれます
- 1本の道路が描けたらReturnキー(Windows)またはEnterキー(Mac)を押します。細い道は「線幅」を小さく設定しましょう
- 川は線の色を「水色」に、「線幅」を「8pt」に設定して、道路と同じように描いていきます
- 川を描き終えたら、[オブジェクト > 重ね順 > 最背面へ」を選択し、道路の下に配置されるようにします

4-3 線路を描く
Illustratorでは1つの図に対して複数の「塗り」や「線」を設定することができます。ここでは、グレーの線に白い破線を追加して、線路を描いてみましょう。
- ペンツールで、道路と同じように地図の線路に沿って線を描きます。線幅は「3pt」にします。
- 描き終わったら、[ウィンドウ > アピアランス]を選択して「アピアランス」パネルを開きます
- 「アピアランス」パネルで「線」を選択し、下の「選択した項目を複製」をクリックします。これで線が二重に描かれた状態になります
- 複製されたほうの「線」の色を「白」に指定します
- 続いて、「線」をクリックして表示されたパネルで、「線幅」を「2pt」に設定し、「破線」にチェックを入れます。「線分」を「6pt」、「間隔」を「8pt」に設定すると、複製された線が白の破線に変更され、線路が完成します

4-4 公園の敷地を描く
公園や建物などの図形を描く場合は、輪郭を線で囲んで最後にパスを閉じます。
- ペンツールを選択し、コントロールパネルの「塗り」を「緑色」に指定し、「線」を「なし」に設定します
- 公園の敷地の周りをクリックしながら囲っていきます
- 最初にクリックした位置に打たれたアンカーポイントをもう一度クリックすると、パスが閉じられて図形が完成します
- 地図が作成できたら、レイヤーパネルで「地図元」レイヤーを非表示または削除します

白の背景にドットのパターンを敷いて、紙面に彩りを与えましょう。ここでは、プリセットのパターンを長方形の「塗り」に適用して背景を作成します。
- レイヤーパネルで新規レイヤーを作成し、レイヤー名を「背景パターン」と入力します
- [ウィンドウ > スウォッチ]を選択して「スウォッチ」パネルを開きます
- パネル下の「スウォッチライブラリメニュー」をクリックし、[パターン > ベーシック > ベーシック_点]を選択します
- 「ベーシック_点」のライブラリが開くので、その中の「10 dpi 70%」をクリックすると、スウォッチパネルに追加されます

- ツールパネルから長方形ツールを選択し、ドキュメント全体を囲むようにドラッグすると、ドットのパターンで塗りつぶされた長方形ができます
- スウォッチパネルの「10 dpi 70%」をダブルクリックすると、パターン編集モードに変わります。タイル内の8つの黒いドットを全て選択し、スウォッチパネルまたはカラーパネルで黄色に変更します
- 黄色のパターンが作成できたら、ドキュメントの上に表示された「完了」をクリックしてパターン編集モードを終了します
- レイヤーパネルで、「背景パターン」レイヤーを選択して「メイン画像」レイヤーの下にドラッグして移動します。これでパターンが最背面に配置されます

ヒント:
パターンは、自分で描いたオブジェクトをスウォッチパネルにドラッグ&ドロップして登録することで、オリジナルのパターンを作成することができます。作成したパターンはカラーだけでなく、「パターンオプション」パネルでオブジェクトの間隔や並び方などを調整することもできます。
チラシ全体の仕上がりを確認します。メイン画像の底辺がカーブしているため、その下に無駄な余白ができているので、ここにイラストを配置して余白を目立たないようにします。また、メイン画像にもイラストを追加して、イベントの賑わい感を演出してみます。イラストはもちろんIllustratorで描くこともできますが、ここでは既存のイラストを自由に配置してみましょう。
- レイヤーパネルで新規レイヤーを作成し、レイヤー名を「イラスト」と入力します
- 練習用ファイルの「illustration.ai」をIllustratorで開き、イラストを全てコピーして、チラシのドキュメントの外にペーストします
- イラストをチラシの好きな場所に配置していきます。イラストはベクター形式なので、拡大・縮小や回転はもとより、カラーや形状を自由に変更することもできます

ヒント:
アドビのストックフォトサービス Adobe Stockにも数多くのベクターイラスト素材が収録されており、Illustratorの「CCライブラリ」パネルから直接検索して使用できます。(素材の購入には別途料金がかかります)
チラシのレイアウトが完成したら、印刷用のデータを準備します。Illustrator形式のファイルでも入稿はできますが、今回は手軽な方法としてPDFに書き出します。印刷用に最適化されたPDF形式で書き出すと、リンク画像を添付したり、印刷会社にフォントがあるかどうかを気にしたりすることなく、安全に入稿できます。
- ドキュメントのフチまでいっぱいにかかるオブジェクト(メイン画像や背景パターンなど)は、ドキュメントの外側に表示された赤いガイド線(裁ち落とし)まで表示範囲を引き延ばします
- [ファイル > 別名で保存]を選択します
- ダイアログボックスで「ファイルの種類」から「Adobe PDF(pdf)」を選択します
- 保存場所、ファイル名などを指定し、「OK」をクリックします
- 「Adobe PDFを保存」ダイアログボックスが表示されるので、「準拠する規格」から「PDF/X-4:2010」を選択します
- 左のメニューから「トンボと裁ち落とし」をクリックし、「すべてのトンボとページ情報をプリント」にチェックを入れます
- 「PDFを保存」をクリックして保存します
