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牡丹、松葉、柳、散り菊
線香花火の一生を例えた言葉だそうです。今回の撮影に臨むに当たり勉強しました。
トップに掲載している写真は、それぞれの様子を並べたものです。
左から「牡丹」「松葉」「柳」「散り菊」です。もちろん、モバイル版Lightroom CCのカメラ機能で写しています。
今回のテーマである「線香花火」が決まったとき、「Lightroom CCのカメラで写せるのか?」と疑問&不安を抱いたのですが、まったくの杞憂に終わりました。
難しさはありますが、「数打てば当たる」戦法でたくさん撮影して、よい形のものを選び出し、編集機能で調整すればトップの写真のとおりです。
いろいろな手持ち花火を撮影してみたところ、火花が拡散する線香花火が「絵になる」花火で、しかも「写しやすい」花火だと思いました。
ひとつひとつが個性的で形状も明るさも異なるし、コンパクトな空間で撮影できるため、試行錯誤がしやすい点も魅力といえます。
夏も終わり秋の気配を感じつつありますが、この夏の締めくくりに線香花火の撮影に挑んでみてはいかがですか?


撮影の前に、これだけは肝に銘じてください。
近づき過ぎるとスマホが焦げる!
線香花火の火花は、想像以上に飛びます。
したがって、花火を大きく写そうと近寄ると、火の粉をかぶる危険があります。
大きく写すときは、カメラ画面をピッチアウトしてズーム(拡大)するか、撮影後に編集機能を使ってトリミングしましょう。
飛び散る火花は予測不能なので、広く写してカッコいい構図に切り抜く後者の方法が最適です。
火花が飛ばない距離を目測したら、背景の様子や手ブレ、ピンボケに注意します。
つまり、シンプルな背景になるように構図を決めて、しっかりとカメラを構えて撮影するということです。
Lightroom CCのカメラ機能の設定は「AUTO」モードでOK。ほとんどの場合、露出の補正も不要です。
下の写真はありがちな失敗例です。
花火がピンポケ(ピントが背後の人物に合っている)な上、シンプルな背景を意識していないために雑多な印象になってしまいました。
ちなみに、人物が画面に入る場合は、身体の一部を大胆に切り取る構図で写す(編集して仕上げる)とシンプルにまとめられます。

花火の背景は「黒」(暗い陰)などの単色が適していますが、空を背景にしてもよい感じに写せます。
また、空に多少の明るさが残っていたり、花火の邪魔をしないように「さりげなく周囲の景色を写し込む」と、哀愁漂う雰囲気が出しやすくなります。

線香花火に似ていて、写しやすい花火が「スパーク花火」と呼ばれる花火です。
棒の先端に火薬がついているためアングルが決めやすく、手に持ったり瓶に挿したりと、さまざまに撮影できます。
下の写真は、100円ショップで購入したガラス瓶に花火を刺して、日没後の藍色の空を背景に写しました。派手な絵柄になるように、花火は二本挿しです。

「花火は暗くなってから」と思いがちですが、写真を撮るなら日没直後の空が明るい時間帯もなかなか乙なものです。
などと知った風に語ってはみましたが、延べ三日に渡る今回の撮影で気づいたことなので、あまり偉そうにはいえません。
どちらにしても、打ち上げ花火と異なり「自分のタイミング」や「自由なアングル」で撮影できる手持ち花火は、写しやすい被写体といえそうです。

下の写真は、モバイル版Lightroom CCの編集機能で仕上げた線香花火です。
撮影現場に程よい台があったので、背景が暗くなる方向にスマホを置いてしっかりとホールドし、その前に線香花火を配置して写しました。
とにかくシャッターを切りまくって、たくさん撮影した中から形のよいものを選び出しています。

編集前の撮影した状態が下の写真です。
不満点としては、火花の散り方が予測不能なので広めに撮影している点と、中心の火球が分かりにくい点、飛び散る火花の色や繊細さがもの足りない点です。
ちなみに、背景にどうしても避けられない障害物(街灯)が写り込んでいたのですが、黒い画用紙でそれを遮って隠しています。
線香花火を写すなら、黒い画用紙を用意しておくとよいかもしれません。

まずは、繊細な火花の描写を引き出します。
輝くように燃えている明るさを取り除けば、火花の筋が見えてくるはずです。
①「編集」画面で写真を表示したら、②「ライト」ボタンをタップして、③「ハイライト」スライダーを左に移動します。
明るい色が重点的に暗くなって、火花の筋が目立つようになりました。火花の中央にある火球も存在感が出ています。

「シャドウ」スライダーを左に移動して、背景の暗い部分をより暗くし、火花が際立つように補正します。
この調整で火花の明るさに微妙な濃淡が出るので、立体的に見えるという効果もあります。また、薄暗く見えている背景がある場合は、黒く引き締めることができます。

背景をより暗くするために、①「黒レベル」スライダーを左に移動して黒に近い色に調整します。
多少の黒つぶれ(黒のべた塗り部分)は写真が引き締まって見えるのでOKですが、火花が薄暗く途切れてしまうような状態はNGです。
ここまでの補正で火花の筋が暗くなっているので、②「カーブ」ボタンをクリックして明るく補正していきます。

「トーンカーブ」機能が表示されました。
①RGBカラーのボタンをタップして明るさを補正する設定にしたら、②線グラフの中央をタップしてポイントを作り、上に移動して明るくします。
この調整は白と黒は変化しないので、撮影した状態のような白く輝く明るさは生じず、火花の筋が重点的に明るくなります。
火花が明るくなり存在感がアップしたら、③「完了」をタップして補正を確定します。

火花の色を赤くしましょう。
「彩度」や「自然な彩度」で鮮やかにするのではなく、「色温度」で暖色系に偏らせる点がポイントです。
①「カラー」ボタンをタップして機能を表示したら、②「色温度」スライダーを右に移動して赤い火花になるように調整します。
これで明暗と色の調整は終わりました。
続けて、③「切り抜き」ボタンをタップして、見映えのよい構図にトリミングして仕上げます。


①枠の四隅をスワイプして範囲(大きさ)を調整します。
切り抜く位置は、②枠の内部をスワイプすれば調整できます。
バランスのよい構図にするコツが花火の中央にある火球の位置で、縦や横の中央か、三分の一の分割線を目安に配置すると安定感が出ます。作例は、横方向の中央を目安に火球を配置しました。
構図が決まったら、③のボタンをタップして確定すれば作業は終了です。


今回はたくさんの写真を撮影しました。連写のごとく撮影したので、類似した写真もたくさんあります。
ほかの写真を同じ設定で仕上げたい場合、パソコン版Lightroom CCを使う方法がおススメです。広い画面で見渡しよく作業できる上、複数の写真に対してまとめて調整が施せるので作業がとても捗ります。
以前の記事でも紹介していますが、大切なことなので今回も繰り返します。
モバイル版Lightroom CCとパソコン版Lightroom CCは、クラウドを経由して同期しています。つまり、モバイル版で撮影した写真や編集した写真は、パソコン版でも同じ状態で表示されるということです。
以上を前提に、ここから先はパソコン版Lightroom CCでの作業に入ります。
調整した内容をほかの写真に適用するときは、①サムネール一覧で編集済みの写真をクリックして選択し、②「写真」メニューの「コピーする編集設定を選択」を選択します。

「設定をコピー」画面が表示されました。
元の写真は切り抜きも実行しているので、①「ツール」の項目にある「切り抜き」にチェックを入れます。
チェックした機能だけがコピーされる仕組みなので、必要な項目をチェックしましょう。よく分からないときは、すべての項目にチェックを入れておけば大丈夫です。
設定できたら、②「コピー」ボタンをクリックします。これで調整した内容がコピーされました。


元の写真と同じ設定で調整できました。
モバイル版でも設定のコピー&ペーストは行えますが、作業効率の面ではパソコン版を使う方が効果的です。
もちろん、写真の色調整をパソコン版で行なってもOK。結果はモバイル版にも反映され、同じ状態で表示されます。

線香花火の撮影は楽しかった!
生き物のように伸びる火花の写真は美しく、見ていて飽きません。
偶然性の高い撮影になりますが、だからこそ熱中できるし、撮り応えがあるのではないでしょうか。
線香花火写真家を目指して精進しようかな、などと考えてしまうほどにハマります。
大切なのは、とにかく撮影しまくること。
経験よりも写真の数。
テクニックよりも写真の数。
撮って撮って撮りまくる。
その中にはきっと、ベストショットが含まれているはずです。
執筆者:桐生彩希
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