※ 本記事は「デジタルカメラ・マガジン」2020年11月号(発行:株式会社インプレス)の特集記事を抜粋したものです
写真・文 ● 木村琢磨

 

Lightroomを直訳すると「明室」。かつて暗室で行っていた現像・引き伸ばしの作業をパソコンを使って明るい場所で行うのがRAW現像だ。暗室でプリントをする場合、焼き込みや覆い焼きのテクニックを使って自分の理想通りの1枚を作り上げていたが、Lightroomでも部分的な焼き込みや覆い焼きが可能。アナログ作業で培った経験値をRAW現像に応用できる。人物の顔だけ少し明るくしたり、空の露出だけ少し下げるなど部分的に補正を施して作品のイメージを作り上げよう。

範囲選択の方法が異なる3種類の部分補正が利用可能

部分補正のツールは段階フィルター、円形フィルター、補正ブラシの3つが備わっている。段階フィルターは角形フィルターの効果をデジタルで再現したもので、ハーフNDのように空の部分だけ露出を下げたり色を変えたりすることができる。円形フィルターは円形マスクを使って部分的な補正を行う。補正ブラシは段階フィルターや円形フィルターでは範囲を選択するのが難しい場合に、ブラシによる自由な選択範囲でマスクを作ることができる。

A 段階フィルター

角形フィルターのように直線的なグラデーションのマスクを作り露出やホワイトバランスを補正できる。縦横だけでなく斜めなど任意の角度にマスクを作ることが可能だ。

B 円形フィルター

人物の顔など画面内の一部分だけ補正したい場合に、円形のマスクを作り補正を行うツール。円形マスクの内側と外側のどちらに補正を施すかも選択できる。左は内側の例。

C 補正ブラシ

段階フィルターや円形フィルターだけでは選択が難しい複雑な形や、より正確なマスクを作り補正をする場合に使う。ブラシを使って描くようにマスクを作成することができる。

補正できる内容

露出やコントラスト、シャドウやハイライト、ホワイトバランスなど基本補正と同等の機能はもちろん、シャープや彩度、モアレの除去やノイズリダクションなど細かく調整可能だ。

覚えておきたい基本操作

編集ピンの表示と複数の部分補正

フィルターが適用されている場合、画面に編集ピンが表示される。編集ピンをクリックすることで再調整ができ、ドラッグすることでマスクを移動させることも可能。部分補正は1つだけでなく複数作ることができる。

 

効果が適用される箇所の確認

補正マスクオーバーレイを表示することで効果が適用されている範囲を視覚化できる。赤くオーバーレイ表示されている部分が現在編集している範囲。表示カラーはレッド、グリーン、ブラック、ホワイトの4色から選べる。

段階フィルター

天地の明暗差調整などハーフNDフィルターのような広範囲の補正に便利

画面の半分だけ露出を下げたり色をかぶせたりしたいと考えたときに思い浮かぶのは、ハーフNDフィルターなど角形フィルターを使った撮影ではないだろうか。角型フィルターを使うにはフィルターホルダーを用意した上で、用途にあった角型フィルターを購入する必要がありハードルが高いが、段階フィルターを使うことで画面の半分だけ露出を調整したり色温度を調整することが可能になるので、擬似的に角型フィルターの効果を得られる。段階フィルターなら、物理的にフィルターが使用できない魚眼レンズなどでもハーフNDフィルターの効果を再現することさえ可能だ。角形フィルターと大きく違うことは撮影後に何度でもやり直しが効くことや露出の調整幅の自由度が高いこと。さらに範囲マスクを活用することで、山や建物など直線では区切れない部分を除外して効果をかけることもできる。

効果範囲の決定

1 ドラッグして適用範囲を決める

補正範囲を決定するためまず起点となるポイントをクリック。効果を足したい方向にドラッグをすることで適用範囲が広がっていき、縦横だけでなく斜め方向にも適用範囲を作ることが可能だ。

2 境界線のぼかし具合を調整する

編集ピンを中心に3本線が表示され3本線の幅が狭くなるほど効果の適用されている部分とされていない部分の境目がはっきりとする。3本線の幅が広がるほど緩やかに変化して、効果の境目が目につきにくくなる。

 

狭い

境目の変化がはっきりとするが、不自然になりやすいので注意。水平線など境がはっきりとした場合に使える

 

広い

境目の変化が曖昧になる。空と山など境界線が直線でない場合は広めに取ると差が不自然になりにくい。

活用例

逆光で飛んでしまった空の表情を見せる

逆光気味の撮影シーンの場合、順光と違い空と地上の明るさを均一にそろえることは難しい。段階フィルターを使い、露出オーバー気味の空の露出のみを下げることで、地上との輝度差を抑えることが可能となる。撮影時に白飛びしている部分に処理を加えても空のディテールが復元できないため撮影時の露出にも注意。カメラのヒストグラムや白飛び警告を使って確認しておこう。

HINT

範囲マスクの輝度を活用して補正範囲を調整する

範囲マスクを使うことで色域を使った選択や、輝度を使ったより細かな選択範囲を指定することが可能だ。段階フィルターをそのまま適用すると空だけでなく選択範囲内の建物なども一緒に効果が反映されてしまうが、範囲マスクを使うことで空だけなどより部分的な選択範囲を指定できる。スポイトアイコンのセレクターを使って補正したい色や明るさを選択することで自動的に選択範囲が指定される。適用量や範囲スライダーを調整すると選択範囲の細かな調整も可能だ。

円形フィルター

柔軟な範囲指定により気になる箇所を指定して補正できる

円形フィルターを使うことで部分的に補正をすることができる。円形の選択範囲を作成し選択した円形の内側、もしくは外側に露出やホワイトバランスなどの補正をかけることができる。円の大きさは自由に変更できて、正円にも楕円にも形状を自由に変更できるので、適用範囲を柔軟に設定しやすい。逆光で撮影して暗くなってしまった人物の顔を明るくしたり、目立たせたい被写体のみを明るく補正したりと、より意図的な演出や補正が可能となる。部分的なホワイトバランスの調整も可能なため外光と室内光やストロボのミックス光による色かぶりの補正も容易だ。円形フィルターは複数の適用も簡単なので、打ち上がった複数の花火部分に対して、1つずつ選択して彩度を上げたり、人物の全身と顔に効果を分けて補正をかけたりと、あらゆるシチュエーションに対して応用の効くフィルターとなっている。

効果範囲の決定

1 ドラッグして適用範囲を決める

クリックして円形フィルターの起点を決定する。起点を中心に円形フィルターが作られるため補正したい部分の中心点から広げていくイメージだ。Shiftキーを押しながらドラッグすることで正円のマスクを作ることもできる。

 

2 境界線のぼかし具合を調整

マスクのエッジの滑らかさを調整する。数値を大きくするとより境目を曖昧にすることができ自然な補正結果を得ることができる。数値を下げることでエッジがシャープになる。

 

3適用範囲の内外を選択する

円形の選択範囲の内側と外側のどちらに補正内容を適用するかを選択できる。ぼかしスライダーの下にある「反転」にチェックを付けると円の内側に、チェックを外すと円の外側に補正内容が適用される。

活用例

人物と背景をしっかりと分離させる

海のロケーションを生かすために、全体をブルートーンに仕上げた。ホワイトバランスを調整して青を強めに仕上げたがモデルの肌色まで青が強く乗ってしまった。主役のモデルの明るさもロケーションに溶け込んでいるので、円形フィルターを使い明るさ持ち上げてモデルに視線が注目するようにして、さらにホワイトバランスを暖色に調整して肌色の発色をより健康的に仕上げた。

モデル●小川優衣

 

1 まずは人物の全身を補正する

最初に青かぶりしている人物を大きく選択して補正する。肌が青白くなり、また背景に引っ張られて少し暗いので、人物の箇所の色温度を上げて青かぶりを補正し、さらに露光量を加えて人物が浮かび上がるようにする。

 

2 次に人物の顔を補正する

一番明るい白い服に埋もれて人物の顔が引き立たないので、視線誘導をする目的で顔の部分だけさらに微調整。円形フィルターを追加して顔を選択した上で、わずかに色温度と露光量を上げることで人物の顔が引き立つ。

補正ブラシ

細やかな範囲選択で複雑な形状の被写体や微細な補正に便利

段階フィルターや円形フィルターでは選択範囲を決定することが難しいような複雑な形状の被写体に対しては、より細かな選択範囲を作ることができる補正ブラシの使用が有効だ。名前の通りブラシで補正したい部分を塗りつぶしていくことでマスクが作られていく。ブラシサイズやぼかしなどを駆使すれば、ブラシのサイズも自由に設定可能だ。円や直線に縛られることなく、複雑な被写体も選択できる。自動で被写体を認識してくれる機能も搭載しており、ペンタブレットなどを組み合わせることでより直感的にマスクを作ることができる。ただし、不自然に効果をかけてしまうと適用範囲が浮いてしまうので、輪郭部分はブラシのぼかし量や密度を薄くするなどして、境目が目立ちにくくすることで、より高品質な補正ができるようになる。正しく活用することで、写真品質を細やかに整えることが可能だ。

効果範囲の決定

1 ブラシのサイズを設定する

マスクを作るためのブラシの性質を決定する。ブラシの面の大きさやエッジのぼかし量、流量など被写体に合わせてマスクを作りやすいブラシにセッティングしよう。

Aサイズ

ブラシで塗りつぶす面積を決定する。数値が大きくなるほどブラシサイズは大きくなり、小さくするとブラシサイズは小さくなる。

 

Bぼかし

ブラシのエッジの滑らかさを調整する。数値が大きいとエッジがぼけるため境界が曖昧な被写体を選択するのに便利だ。

 

C流量

ワンクリックした際に出るインク量のことで100を上限に重ね塗りすることで少しずつマスクを濃く塗りつぶすことが可能になる。

 

D自動マスク

塗りつぶした部分の被写体を自動で認識しマスクを作ってくれる機能。背景と被写体がはっきりしている場合に有効。

 

E密度

補正ブラシの上限値で指定した数値以上の濃度で塗りつぶすことができなくなる。50に指定すると50%の濃度のマスクまでしか作れない。

 

2 ドラッグして適用範囲を決める

補正ブラシは効果を適用したい対象物を塗りつぶしていくだけでマスクが作れるため直感的な操作が可能だ。ナビゲーターの倍率を調整しながら丁寧に塗りつぶそう。

活用例

複雑なエッジの猫を明るく調整する

補正ブラシを使って猫の明るさを調整。複雑な形状であるため補正ブラシを使ってマスクを作成した。ピントのはっきりしている部分はぼかし量を少なく、なだらかにぼけている部分はぼかし量を大きくしてマスクのエッジも曖昧にすることで補正効果がより自然に仕上がる。被写体の輪郭に合わせてブラシの性質を調整しよう。

HINT

補正内容を別の写真に流用するときは部分補正の同期に注意

たくさんのRAWデータをすべて1から現像すると作業時間がかかる。Lightroomには現像設定を別の画像にも適用できる機能が備わっている。同じ補正効果を何枚にも適用したい場合、画像を選んで前の設定をクリックするだけで明るさや色みの調整を適用できる。ただし部分補正など被写体に応じて細かく補正をしているものも引き継がれるので、不要な補正が適用される点に注意だ。

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