※ 本記事は「デジタルカメラ・マガジン」2020年11月号(発行:株式会社インプレス)の特集記事を抜粋したものです。
写真・文 ● 茂手木秀行

 

 

夏の午後、南大東島で撮影した1枚。青空に浮かんだ白く大きな積雲に一服の清涼を感じた。積雲の白が飛ばないように-2.3EVまで露出補正をしたので画像はかなり暗い。眩しい日差しを表現するため、全体的に明るく調整する。積雲が夏を伝える重要な要素になるため、白が飛んで雲のディテールが失われないように配慮した。

現像前

ソニー α7R Ⅱ/Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA/35mm/絞り優先AE(F1.4、1/5,000秒、-2.3EV)/ISO 50/WB:オート

STEP1 基本補正の階調で明るさを補正

「レンズ補正」のプロファイルを適用。「基本補正」の露光量を雲が飛ばない程度(+1.15)に明るくする。葉の影はシャドウを+77上げて起こす。ハイライトは−30に下げて雲のディテールを取り戻す。最終的に露光量を+1.95にアップ。

STEP2 基本補正の白レベルを下げる

雲の明るい部分のディテールが見えるようになるまで、白レベルを−44に下げる。

STEP3 基本補正のかすみの除去で空の明るさを落ち着かせる

「基本補正」のかすみの除去を+13にする。

[ポイント] かすみの除去を見極めて使用する

<質感の調整>

かすみの除去を使って、やや明るくなり過ぎた空の明るさを抑えて空の高さを表現する。かすみの除去は赤系統以外の色の明るさを補正するのに効果的なため、青い空の明るさを抑えるには使いやすいツールだ。しかし、調整し過ぎると空のトーンに不自然な境界が現れる。また彩度も高くなるので、補正のし過ぎには注意したい。

STEP4 トーンカーブを使い明部を調整

ポイントカーブの白点を下げて空と雲のハイライト部分の明るさを微調整して抑える。

[ポイント] トーンカーブの白点を下げて雲の陰影を取り戻す

<明るさの調整>

パソコンのディスプレイで画像を確認すると、白点付近のハイライトでは階調差が曖昧に見える。この写真の場合は、白い雲の陰影が若干不鮮明になっている。そこで、ポイントカーブの白点(RGBそれぞれ255の一番明るいポイント)を240程度に下げ、ハイライトを明るいグレーとして表現。こうしておくと、情報が抜けない。下がったハイライトと中間は上げて戻しておく。

STEP5 HSL/カラーで地上と空を調整

輝度で地上を明るくする。レッドは+8、オレンジは+42、イエローは+44、グリーンは+9に。空のブルーは−6に下げる。

[ポイント] 地上の風景に含まれる色をHSL/カラーの輝度で明るく

<色の調整>

STEP4までの調整を終えてもまだ地上の風景はやや暗く、強い日差しの印象はない。そこで地上の風景に含まれる色(レッド、オレンジ、イエロー、グリーン)の輝度を上げ、明るく表現することで強い日差しの印象を得る。同時にブルーの輝度はやや落として、空を若干暗くする。色相の変化から、地上の風景と空の境界部分には無彩色部分が生まれてしまうので、各色を調整する際には無彩色部分が目立って明るくなったり、暗くなったりしないように注意する。

STEP6 明暗別色補正で日差しを表現

ハイライトとシャドウの色相を56に上げ、ハイライトの彩度を17、シャドウの彩度は13に上げて午後の日差しを表現。

[ポイント] ハイライトとシャドウに日差しの黄色を加える

<色の調整>

地上の風景のハイライトとシャドウに注目して午後の日差しの色を作る。ハイライトとシャドウの両方に午後の日差しらしい黄色(色相56)を加え、彩度をわずかに上げる。北の空は午後になっても青いままなので空の色に影響が出ないように注意する。この調整を色温度で行わないのは、RGB各チャンネルのバランスが変更されると白色が飛んでしまうためだ。

STEP7 HSL/カラーで葉を落ち着かせる

葉の緑色の彩度が上がり過ぎてしまったので「HSL/カラー」のを使ってグリーンの彩度を−25に下げる。

STEP8 レンズ補正を使い周辺を締める

STEP1で行った周辺光量補正の効果が強過ぎたので、「レンズ補正」の周辺光量補正を59に下げて弱める。

STEP9 HSL/カラーで輝度を再度調整

周辺光量の低下に合わせて輝度をアップする。オレンジを+74、イエローを+79、グリーンを+25に上げる。

STEP10最後に基本補正で明るさを整える

最後に「基本補正」で露光量を+2.20、シャドウを+86に上げて、明るく強い夏の日差しを演出する。

FINISH

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