ニューヨーク在住の日本人イラストレーター Kei Meguroさんが、手描きのスケッチをPhotoshop に読み込み、デジタルならではの加工を施してアーティスティックな作品に仕上げるまでの工程 をステップバイステップで解説します。Keiさんの、手描きのイラストテクニックも参考にしてください。
ブラシツール、描画モード、レイヤースタイル、Creative Cloudライブラリ
1. 画用紙にスケッチを描く
2. 手描きのスケッチをスキャナーで読み込む
3. 紙についた汚れをブラシツールで消す
4. 描画モードで雰囲気のある色合いを作る
5. Photoshopで服のストライプを描く
6. ブラシツールで口紅の色を加える
7. ストライプのはみ出した部分を整える
8. ウォーターマーク(透かし)を追加する
鉛筆やチャコールを使って画用紙にスケッチを描きます。始めに鉛筆で大まかに輪郭を描き、細かい部分にしっかりとした線を入れ、チャコールで微妙な陰影をつけてきめ細かく仕上げていきます。まるで写真のような、きわめて写実的な作品を生み出すKeiさんの描画テクニックをご覧ください。
スケッチした画用紙をスキャナーにセットし、Photoshopの「ファイル」メニューから「読み込み」、「画像をデバイスから… 」の順に選択します。「画像をデバイスから読み込み」画面でコンピューターに接続されたスキャナーを選択し、解像度やサイズ、フォーマットなどを設定して「スキャン」をクリックします。スキャンが終了すると、Photoshopでスケッチの画像が表示されます。
※解像度は後から下げることができますので、通常よりも2倍くらい大きめに設定しましょう。
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スケッチの際に紙についてしまった鉛筆の汚れを、「ブラシ」ツールを使って消していきます。まず「レイヤーパネル」で、読み込んだ画像をダブルクリックしてレイヤー化します。レイヤー名を「DRAWING」と入力します。
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次に、「ブラシツール」を選択して、画面上部のツールオプションバーでブラシのサイズを調整します。描画色を白に設定し、汚れのついた部分をマウスでなぞります。汚れが白く塗りつぶされて綺麗になったら、余分な線なども消していきます。
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レイヤー同士の色を合成して、白背景の画像を雰囲気のある色合いに変えてみます。まず、「レイヤーパネル」の下にある「新規レイヤーを作成」をクリックし、新しいレイヤーに「BASE」と名前をつけます。
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次に、「長方形選択ツール」を選択し、カンバスサイズよりひと回り小さく、周囲に余白出るようにドラッグします。四角形の選択範囲が表示された状態で、メニューの「編集」から「塗りつぶし」を選択し、「塗りつぶし」画面を開きます。
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「内容:」のメニューから「カラー」を選択すると、カラーピッカーが開きます。「R:218」「G:214」「B:203」を設定し、OKをクリックして閉じます。「塗りつぶし」画面に戻り、「OK」をクリックすると、選択範囲がベージュに塗りつぶされます。これが基本カラーとなります。メニューの「選択範囲」から「選択を解除」をクリックします。
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続いて、「レイヤーパネル」で「DRAWING」レイヤーを選択し、その上にある「描画モード」のメニューから「比較(暗)」を選択します。白背景のスケッチ画像に、下のレイヤーのベージュが重なり、陰影を生かした雰囲気のある色合いになりました。スケッチの描線もしっかりと出ています。
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手書きのスケッチでは描かれていなかった服の部分を、Photoshopの「ブラシ」ツールで描き足してみましょう。レイヤーパネルの「新規レイヤーを作成」をクリックし、新しいレイヤーに「STRIPES」と名前をつけます。作成したレイヤーをドラッグして「DRAWING」レイヤーの下に移動します。
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次に、「ブラシ」ツールを選択し、ツールオプションバーの「ブラシプリセットピッカー」をクリックして開き、ブラシプリセットの「鉛筆」を選択します。描画色を黒に設定し、カンバス上にストライプを描画していきます。後から修正できるので、枠の外にはみ出しても構いません。
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黒のストライプ柄が描けたら、他のカラーも試してみます。「レイヤーパネル」で「STRIPES」レイヤーを選択した状態で、下にある「レイヤースタイルを追加」をクリックし、プルダウンメニューから「カラーオーバーレイ」を選択します。
「レイヤースタイル」画面が開いたら、「表示色」のカラー設定をクリックし、カラーピッカーで変更した色を指定します。ここでは白を指定して「OK」をクリックし、「レイヤースタイル」画面に戻って「OK」をクリックします。ストライプが白に変更されます。結果がもう一つなので、黒に戻します。
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モノトーン調の画像に、アクセントカラーとして口紅の色を追加してみましょう。「レイヤーパネル」の「新規レイヤーを作成」をクリックし、新しいレイヤーに「LIP COLOR」と名前をつけます。レイヤーの位置は一番上です。
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次に「ブラシツール」を選択し、ツールオプションバーの「ブラシプリセットピッカー」をクリックして開き、ブラシプリセットの「ソフト円ブラシ」を選択します。
「不透明度」は15%まで下げます。描画色をクリックしてカラーピッカーを開き、口紅の色を指定します。ブラシサイズを調整して、口紅の色を塗っていきます。
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塗り終わったら、「レイヤーパネル」で「LIP COLOR」レイヤーを選択したまま、その上にある「描画モード」のメニューから「比較(暗)」を選択します。口紅の色がスケッチ画像の色とブレンドされ、自然な仕上がりになります。
ストライプを描画した際に、はみだしてしまった部分を綺麗に整えます。「レイヤーパネル」で「STRIPES」レイヤーを選択し、「長方形選択ツール」でベージュのエリアを四角で囲むように選択します。
メニューの「選択範囲」から「選択範囲を反転」をクリックし、キーボードのdeleteキーを押します。これで、ストライプのはみだした部分が綺麗に削除されました。
最後に、ウォーターマークを追加します。ウォーターマークとは、著作権保護などを目的とした透かしの文字や図のことです。ここでは、Keiさんがいつも使用しているウォーターマークを追加する方法を説明します。
※Keiさんは、Illustratorを使って自身のウォーターマークを作成し、それを Creative Cloudライブラリ に保存しています。 Creative Cloudライブラリ には、画像やベクターグラフィック、ブラシ、カラーテーマ、文字スタイルなどの素材を保存することができ、PhotoshopやIllustratorなどの「ライブラリ」パルからいつでも簡単に取り出して使用することができます。
Photoshopの「ウィンドウ」メニューから「ライブラリ」を選択し、「ライブラリ」パネルを表示します。「ライブラリ」パネルにあるウォーターマークを選択し、カンバス上にドラッグアンドロップで配置します。位置と大きさを調整し、不透明度を設定したら完成です。
物心ついた時から、絵を描くのが大好きでした。大学を卒業してからすぐに、グラフィックデザイナーとして大手企業に勤めておりました。パソコンに向かう時間が増え、自分の手で何かを物作りをする時間が徐々に減ったことに気づきハッとさせられました。早速学生時代から使っていた鉛筆•チャコールとスケッチブックを引っ張りだして、絵を描き始めたのがきっかけです。
毎日仕事終わりに原点である人物画を描き、インスタグラムに「日記」のようにアップをしていたら、フォロワーが増え、イラストレーターとしてのお仕事をいただけるようになりました。お勤めしていた会社を退職し、今に至ります。
学生時代を除くと、2012年の秋頃からポートレートを描き始め、初めてイラストレーターとして頂いたお仕事は2013年の3月頃です。
何十時間もかけて絵を描いているので、「これで実際に色を鉛筆や水彩でダメにしたらやりなおし…!」という恐怖心から使い始めたのがきっかけです(笑)
今では手描きとデジタルのコントラストを上手に使いこなせたらいいな、という思いで鉛筆画対グラフィックな線や色で作品を完成させています。
ブラシツールには本当にお世話になっております。最近iPadでも絵を描き始めたので、いろいろなブラシをCreativeCloudでインポートできるのが、ものすごく便利で。今では移動中でも絵が描くのが楽しい時間です。
InDesignとIllustratorもデザインの仕事をする際に使っています。ロゴを作成する時はIllustratorで、レイアウトなどは全てInDesignで作成しています。
ニューヨークに住んでいるので、日常的に素敵な人に囲まれてます笑 おしゃれでファンキーなおばあちゃんだったり、プロのモデルさん、ミュージシャン… 数えだしたらきりがないです。世界中から人が集まる都市なので、自然と「人」を目で追ってます。
「あの人みたいな子描いてみたいな」と思ったら、名刺を差し出してモデルになってもらったりしています。常にいろんな方からインスピレーションを受けてます。
手を使って細かい作業をするのが大好きなので(友人にはいつも絡まったアクセサリーを解いてと頼まれ、喜んでいるような変人です笑)、今は刺繍やコラージ作り、お料理などとりあえず手作業で何かを作ることが大好きです。
Kei Meguro(目黒ケイ)
東京生まれ、NY在住のイラストレーター•グラフィックデザイナー。優秀なアシスタントである愛犬モモとミカンと活躍中。幼少の頃より絵を描き続け、現在に至る。NYのSchool of Visual Artsに学び 2010年グラフィックデザインBFA取得。