Adobe Dimension の 3D画像の合成とレンダリングを使用して、現実と見分けがつかないフォトリアルなバーチャル写真を作成する方法を説明します。
Adobe Dimension で作成されたフォトリアルなバーチャルフォトの作例コラージュ
Adobe Dimension で作成されたフォトリアルなバーチャルフォトの作例コラージュ

上の画像を見ると、すべての被写体が本物だと思うのも無理はありません。フォトリアルな 3D イメージレンダリングの技術的な進歩に伴い、何が現実で何が仮想であるかを判断するのは、これまで以上に困難になっています。このような画像は、現実の写真とレンダリングされた 3D コンテンツの組み合わせで構成されており、まさにこのようなタイプの 3D デザインに様々な企業が投資しています。

ジェームズ・キャメロンの「アビス」で、メアリー・マストラントニオが CGI の水の触手に触れようとしているシーン
ジェームズ・キャメロンの「アビス」で、メアリー・マストラントニオが CGI の水の触手に触れようとしているシーン

このレイヤー化の手法、つまり 3D モデルを画像や動画と合成する手法は、新しいものではありません。実に、起源は VFX の初期(1980年代まで)にまで遡ります。現在、この手法が Adobe Dimension のユーザーに強力なツールとして提供され、写真家にとって魅力的な新しいワークフローになったことは、革新的で喜ばしいことです。

Adobe Dimension で合成画像を作成する技術

Adobe Dimension コンポジットで金属球モデルの面を編集
Adobe Dimension コンポジットで金属球モデルの面を編集

Adobe Dimension では、Adobe Sensei を活用した「画像から環境を設定」機能を使用して、2D と 3D の要素を直接アプリケーション内でシームレスに組み合わせることができます。この方法で要素を合成する主な利点は、リアルな見映えの画像を作成するプロセスが強化されることです。現実と変わらない 3D シーンを、現実世界で撮影可能な背景イメージで置き換えることができます。 

Adobe Dimension の「画像から環境を設定」機能は、背景イメージを分析し、撮影に使用されたカメラの焦点距離と位置を推測します
Adobe Dimension の「画像から環境を設定」機能は、背景イメージを分析し、撮影に使用されたカメラの焦点距離と位置を推測します

「画像から環境を設定」機能は、背景イメージを分析し、撮影に使用されたカメラの焦点距離と位置を予測します。次に、Dimension シーンに 3D カメラが作成されます。このカメラを使用して、背景画像と同じパースで 3D 要素をレンダリングし、背景と合成します。

ここで、カメラのフレーム内に撮影されていないその他の要素についても考えましょう。画像が撮影された環境全体が非常に重要です。これにより、フレーム内のすべての物体の見え方が変わるからです。画像内の物体は周囲の光を反射します。カメラの背後の光もすべて含みます。レイヤー化された 3D 要素を画像の背景と正しく溶け込ませるには、画像が撮影された環境の照明を完全に反映させる必要があります。

リビングルームに置かれた小型バイクのフォトリアルな 3D 合成画像
リビングルームに置かれた小型バイクのフォトリアルな 3D 合成画像

「画像から環境を設定」では、背景画像が撮影された照明環境の「まぼろし」を再現しようとします。これは、優れた結果をすばやく得られる素晴らしい処理ですが、背景と同時に環境をキャプチャすると、よりリアルな結果が得られます。これは、Adobe Sensei が独自でこの処理をおこなえるように、その機能をトレーニングするのに使用される方法でもあります。

オフィス空間の 360 度 HDR パノラマ
オフィス空間の 360 度 HDR パノラマ

360° HDR パノラマ画像の世界に入ります。このような画像は、全周囲の照明環境の照明効果を迅速に処理するために 3D グラフィックで長い間使用されています。以前は、パノラマ画像を取得するプロセスは、3D グラフィックの作成に必要な高度な知識や特殊な機器が必要であったため、非常に複雑でした。360° カメラが登場し、このような画像の作成がこれまで以上に容易になりました。

Ricoh Theta 360 度カメラの製品画像
Ricoh Theta 360 度カメラの製品画像

Ricoh Theta、Gopro MAX、Insta 360 などのカメラは、360 度のパノラマを撮影できます。Ricoh Theta は、撮影プロセスの重要な要素である自動露光量ブラケット機能を内蔵しています。これにより、HDR の撮影にかかる時間と手間が削減され、写真家が使いやすくなっています。

フォトリアルな合成画像を作成するプロセス

キャプチャ

合成の環境のキャプチャを開始するには、1 つまたは複数の高画質の背景画像と撮影環境の 360° HDR パノラマという 2 つの主要な要素が必要です。

このタイプのコンテンツを効果的にキャプチャする上で最も重要な側面として、写真家の既存のスキルとツールを活用することが挙げられます。美しい背景画像を作成するには、構図を見る目と細部への注意が必要です。また、背景画像では、3D 要素の合成に有用なものを作成するために、特別な考え方が必要です。

場所の選択

状況や照明が適していると思われる場所を探します。状況を考慮するときは、シーンで考えられる使用方法を想像すると決めやすいです。例えば、何もない道の景色は、3D の車を追加するのに使用できるでしょう。また、コーヒーショップのテーブルの景色は、食品のパッケージを見せるのに使用できるでしょう。

バーチャルフォトの 4 つのロケーションシーンを、3D が合成された同じシーンと対比しています
バーチャルフォトの 4 つのロケーションシーンを、3D が合成された同じシーンと対比しています

背景画像を撮影する場合は、3D 要素がその画像に合成されることに留意することが重要です。これらのオブジェクトを配置する領域を残すために、焦点が合っている空の領域が必要です。3D コンテンツが最終的な作品の主な注目ポイントになる場合が多いので、背景自体が過度に目立たないことが重要です。

各アイコンは、バーチャルフォトの背景に最適な光の方向と合焦点を示しています
各アイコンは、バーチャルフォトの背景に最適な光の方向と合焦点を示しています

合成された 3D コンテンツに大きな影響を与えるので、画像内の照明の状況も同様に重要です。照明は、肩越しに、またはサイドから場面に入る必要があります。このような照明は、3D オブジェクトがシーンに配置されるときにキーライトとして機能するので、最良の結果が得られます。ビュー内に合焦する要素がない場合は、逆光で撮影するのも魅力的です。ただし、コンテンツが常に逆光になることに注意してください。シーンに代役オブジェクトを一時的に追加すると、照明の構成や評価に役立ちます。

HDR パノラマのキャプチャ

カメラの配置

背景の撮影で焦点を合わせる領域のほぼ中央に 360° カメラを配置します。広いシーンを見せる背景の場合は、モノポッドを使用してカメラを地面から持ち上げるのが最適でしょう。そうでない場合は、カメラを地面に直接置くのが良いでしょう。

カメラの配置

カラー

オフィス空間の 360 度 HDR パノラマで、前景にカラーチャートを置いています
オフィス空間の 360 度 HDR パノラマで、前景にカラーチャートを置いています

環境撮影に使用するカメラと背景撮影に使用するカメラの間でカラーを維持することは、これらの画像を同時に使用するため、非常に重要です。ここでは、両方のカメラの色温度を 5000k に設定し、後で詳細に調整できるように、両方のカメラを使用してカラーチャートの写真を撮りました。

露光量ブラケット

360° カメラで HDR 環境を作成するには、複数の EV を撮影し、後処理で HDR 画像に合成する必要があります。EV 量は標準化されていませんが、一般に、露光量範囲の上端をシャドウに情報がなくなるポイントに設定し、露光量範囲の下端をハイライトに情報がなくなるポイントに設定します。

360° カメラには、異なる露光量をカメラで一括撮影できる自動ブラケット機能が備わっているのが理想的です。最適な設定は、ノイズが発生しない最小の ISO 値を使用し、高い絞り値で画質をシャープにすることです。次に、シャッタースピードを使用して露光量を変えることができます。1 段ずつ細かく変えたり、露光量を半分にしたり 2 倍にすることも可能です。

オフィススペースの 360 度 HDR パノラマで得られる、ブラケティングによる一連の露光値
オフィススペースの 360 度 HDR パノラマで得られる、ブラケティングによる一連の露光値

次に、IBL を屋外で撮影するために使用する EV の例を示します。

01 - F 5.6、ISO 80、シャッタースピード 1/25000、WB 5000 K

02 - F 5.6、ISO 80、シャッタースピード 1/12500、WB 5000 K

03 - F 5.6、ISO 80、シャッタースピード 1/6400、WB 5000 K

...

16 - F 5.6、ISO 80、シャッタースピード 1、WB 5000 K

使用している 360° カメラが RAW 画像出力に対応している場合、JPEG のような8ビット画像より多くの情報を保持できるため、EV は 2~4 段の増分単位で分割できます。

Adobe Photoshop の「HDR Pro に統合」のファイル選択メニュー
Adobe Photoshop の「HDR Pro に統合」のファイル選択メニュー

必要に応じて各 EV にカラー調整をおこなった後に、一時的に個別のファイルに書き出して、Photoshop で結合できます。ファイルタイプはソースに依存しますが、いずれの場合でも JPEG のような圧縮形式を使用しないでください。Photoshop でファイル/自動処理/HDR Pro に統合を選択し、書き出された EV をすべて選択します。

Adobe Photoshop の「HDR Proに統合」プレビュー画面
Adobe Photoshop の「HDR Proに統合」プレビュー画面
Adobe Photoshop の「HDR Proに統合」設定
Adobe Photoshop の「HDR Proに統合」設定

モードが 32 ビットに設定されていることを確認します。「ゴーストを除去」を使用すると、EV 間で変化したディテールを除去できますが、不要な場合は使用しないでください。ヒストグラムの下のスライダーは、プレビューの露光量にのみ影響するので、無視します。「Adobe Camera Raw でのトーニングを完了」をオフにし、「OK」を押します。

床面に影が見える、オフィス空間の 360 度 HDR パノラマ
床面に影が見える、オフィス空間の 360 度 HDR パノラマ

最終的に、3D でシーンに照明を当てるために使用できる HDR 画像が作成されます。

床面に影が見える、オフィス空間の 360 度 HDR パノラマ
床面に影が見える、オフィス空間の 360 度 HDR パノラマ

最後に、画像の床面に見える影と三脚を除去し、シーンに正しく照明を当てるために画像のデフォルトの露光量を調整します。ディテールの除去は、Photoshop のクローンツールを使用しておこなうことができます。HDR IBL の露光値は 3D オブジェクトの照明値であるため、露光量の調整は、Dimension で背景と同時におこなう必要があります。

背景の撮影

3D 合成画像用に撮影された一連の背景写真
3D 合成画像用に撮影された一連の背景写真

環境をキャプチャしたら、お好みのカメラを使用して背景を撮影します。画質と解像度は高いほど良い結果を得られます。これは、このプロセスの主な利点です。もちろん、写真家が持つ構図を見る目も重要です。上の画像は、キヤノン 5D MK IV で撮影したものです。

バーチャルフォトの背景画像で考えられるカメラアングルを示した図
バーチャルフォトの背景画像で考えられるカメラアングルを示した図

背景のフレーミングや構図には多くの自由度があります。カメラは、絞り値を上げたり下げたりして被写界深度を変化させることができます。長い焦点距離や短い焦点距離を使うことができ、上下に角度を付けることもできます。重要な要件は、360 度カメラで環境を撮影したときの中心点にカメラを向けることです。

撮影が完了したら、画像を後処理して環境の色にできるだけ近づける必要があります。カラーと露光量は、できる限り中間調で自然である必要があります。見え方のスタイルは、Adobe Dimension で 3D 要素を画像と合成した後に適用する必要があります。

Dimension に合成画像を組み込む

これで、必要な要素がすべて完成したので、Adobe Dimension のシーンに組み込むことができます。これは、背景をシーンにドラッグするだけの簡単な操作で、自動的に背景に適用されます。次に、HDR パノラマを環境光の画像スロットに追加します。

背景画像をカンバスの空の領域にドラッグ&ドロップするか、シーンパネル内の「環境」を選択して、背景入力に画像を追加します。

バーチャルフォトの背景画像は、Adobe Dimension のプロパティメニューから選択できます
バーチャルフォトの背景画像は、Adobe Dimension のプロパティメニューから選択できます

HDR パノラマを追加するには、「環境光」を選択し、画像入力に追加します。

環境光源は、Adobe Dimension のシーンメニューから、バーチャルフォトの背景画像に追加できます
環境光源は、Adobe Dimension のシーンメニューから、バーチャルフォトの背景画像に追加できます

次に、「画像から環境を設定」を背景で使用して、解像度や縦横比、さらにカメラのパースも合わせることができます。背景画像から環境を生成する代わりに、キャプチャした HDR パノラマ画像を使用してシーンに光を当てることができます。したがって、「ライトを作成」オプションはオフのままにすることができます。

Adobe Dimension の「画像から環境を設定」機能を使用して、3D の金属球画像を HDR パノラマの環境光を使用してレンダリングします
Adobe Dimension の「画像から環境を設定」機能を使用して、3D の金属球画像を HDR パノラマの環境光を使用してレンダリングします

これで、シーンに追加されたオブジェクトは、画像が撮影された環境によって光が照らされるので、リアルに背景に合成されます。

背景に相対的な HDR パノラマの向きと露光量を迅速に評価するために、Dimension の無料アセットパネルから取り込んだメタルマテリアルの球体プリミティブをシーンに配置できます。環境光の回転を、反射が正しく見えるように配置できます。HDR パノラマからの照明で球体が露光量過多または露光量不足になる場合、HDR パノラマの露光量を増減させて補正する必要があります

オフィス空間の背景画像上に、金属球のフォトリアルなバーチャルフォトを合成します
オフィス空間の背景画像上に、金属球のフォトリアルなバーチャルフォトを合成します

背景に相対的な HDR パノラマの向きと露光量を迅速に評価するために、Dimension の無料アセットパネルから取り込んだメタルマテリアルの球体プリミティブをシーンに配置できます。環境光の回転を、反射が正しく見えるように配置できます。HDR パノラマからの照明で球体が露光量過多または露光量不足になる場合、HDR パノラマの露光量を増減させて補正する必要があります。

最終結果:フォトリアルな合成画像

Adobe Dimension でのバーチャル製品フォトの 3D 合成とレンダリングのタイムラプス
Adobe Dimension でのバーチャル製品フォトの 3D 合成とレンダリングのタイムラプス

シーンが完成したら、エンドユーザーのワークフローは簡単です。自分で作成したモデルや Adobe Stock 3D のコンテンツを直接画像にドラッグ&ドロップするだけで、撮影時にその場にあったかのようにレンダリングできます。これにより、高度にリアルな広告コンテンツを作成したり、様々なコンテキスト内でデザインを反復するといった、新しい表現方法への道が開けます。

キッチンカウンタートップのシーンに合成された 3D アプライアンスのフォトリアリスティックなバーチャルフォト
キッチンカウンタートップのシーンに合成された 3D アプライアンスのフォトリアリスティックなバーチャルフォト

最終的な結果は、リアリティと 3D の非常に高品質なブレンドとなり、エンドユーザーは、最小限の労力でフォトリアルな画像を作成するという目標を達成することができます。このワークフローを説明するために作成した無料の Dimension シーンを使用して、実際に試してみてください。

Dimension の最新リリースを今すぐダウンロードして、フォトリアルな画像の作成を始めてみましょう。