3D ライティングの概要と、コンピューターで生成したシーンを大きく変化させたりシーン内の被写体の見た目を変化させるさまざまな照明コンディションを作成する方法について説明します。
私たちは、感覚を使って周りの世界を知覚、すなわち聴いたり感じたり匂いを嗅いだり見たりします。私たちが目で見ることができるのは、光子と呼ばれる素粒子によってもたらされる情報を目が取り込んでいるからです。この情報は私たちの脳により処理され、映像が作り出されます。物体の色、光沢、透光性、金属質として私たちが解釈するものは、すべて光子と物体の表面との相互作用の産物です。
コンピューターで生成された 3D シーン内の光のメカニズムは、レイトレーシングと呼ばれる処理を通じて、光子散乱の自然な原理と同様に作用します。光線はシェイプに跳ね返り、マテリアルと相互作用し、最終画像で実際にオブジェクトがどう見えるかが決まります。ライトは、3D シーンに存在するあらゆる要素の立体感を浮き出させます。
一部のマテリアルは、他のマテリアルよりも光源条件に敏感です。例として金属を挙げます。クロムのオブジェクトは、基本的に周囲のすべてを反射します。照明を移動して明るくなったり広がったりすると、すべての情報が、ほぼ鏡のようなディテールでクロムの表面に直接現れます。したがって、光源条件を変えることで、見え方が大きく変化します。

3D ライティングを操作して効果的な 3D レンダリングを作成する方法
3D レンダリングを作成するプロセスがまったく同じになることはありませんが、最も一般的な手順を次に示します。
- オブジェクトの作成または取得
- シーンの組み立て
- シーンのフレーミング
- 照明
- マテリアルの作成または割り当て
- レンダリング
照明の段階に来たら、照明を設定してからマテリアルを操作するのが理想的です。これをおこなうには、中間色のグレーの艶消しマテリアルをシーン全体に割り当てます。これにより、照明がシーン内のオブジェクトのシルエットに与える影響をより明確に確認し、理解することができます。マテリアルが完成したら、照明をさらに修正する必要が生じる場合があります。

照明は、一度に 1 つずつ操作することをお薦めします。アクティブなライトだけをシーンに見えるようにして、他のライトは一時的にオフにする必要があります。これにより、特定のライトがシーンにどのように影響するかを確認し、そのプロパティ(位置、方向、強さなど)を操作して変更できます。

もう 1 つの便利な方法は、光沢のある金属マテリアル(クロムまたはミラー)球体を作成することです。この「ミラーボール」は、周りのシーン全体を完全に反射するので、ライトの位置、方向、サイズを簡単に決定できます。環境光の場合、ミラーボールに反射が見え、空間での方向の設定に役立ちます。

Adobe Dimension のライトの種類
環境光
環境光は正距円筒図法(球状)の画像で、シーン全体を包み込んでいます。その名前が示すように、このライトは、環境全体をエミュレートする役割を持ち、これには光源も含まれ、環境に組み込まれています。

Dimension で新しいシーンを作成すると、デフォルトの環境光が自動的に作成されます。シーンの中のすべての物を実際にすぐに見ることができるのは、この光があるからです。Adobe Dimension スターターアセットには、いくつかの環境光が含まれおり、これらをすぐに試してみることができます。また、Adobe Stock には、厳選された環境光が多数提供されています。
環境光は非常にリアルな結果を生み出し、時間を大幅に節約できます。手動で同じようなことを実現するには、3D で環境全体(様々な光源を含む)を実際に作成する必要があります。これは非常に手間のかかる作業です。

環境光を作成するには、3D シーンからキャプチャする、写真からキャプチャする、パラメトリックシステムを使用するなど、様々な方法があります。3D シーンを使用して環境光が構成されている場合、処理は簡単です。出力画像は 32 ビットにする必要があります。32 ビットでは、シーン内のすべてのライトの光の情報がキャプチャされます。3D カメラは、(球面画像を出力するための)正距円筒図法を使用する必要があります。


現実世界の写真を撮影して、環境光を作成することも可能です。このワークフローには、360 度カメラが必要です(例:Ricoh Theta Z1)。次に、カメラは露光量ブラケティングまたは同じ環境の複数のショットに使用され、一定の範囲の異なる露光値(露光量不足から露光量過多まで)で撮影されます。これらのショットは、一般的に HDR(High Dynamic Range の略称)と呼ばれる 32 ビット画像を構成するために使用されます。このような画像を構成するには、Photoshop の「HDRに統合」機能を使用するなどの方法があります。埋め込まれた露光量範囲が、強度プロパティになります。


いずれの場合も、光源(およびその強度)はこれらの画像に「焼き付け」られて、Dimension で使用されると光を発します。
この方法では、必要な照明、反射、ディテールをすべてキャプチャしましたが、3D アプリでは 3D 空間でこれらの編集を引き続きおこなえるので、照明の回転を調整したり、全体の強度やカラーを変更したりできます。

指向性ライト
あらゆる方向から光を放つ環境光に加えて、1 方向からのみの光を放つ指向性ライトもあります。フラッシュライトや、明確に定義された光源から発せられるその他のタイプのライトをエミュレートするために使用され、円や正方形の形にすることができます。
指向性ライトを使用すると、照明の設定を完全に制御できます。このライトを使用してシーンをライティングする方法は、従来の写真撮影の場合と同じです。各ライトを個別に制御できるので、独自の仮想的な写真照明を作成できます。最も一般的に使用される照明設定の 1 つに、3 点ライトシステムがあります。
Dimension には、「ライトをポイントに向ける」という便利な操作があり、3D オブジェクト全域でクリックとドラッグ操作をおこなうだけで、回転と高さを制御できます。これにより、光線の方向を動的に変化させることができます。これらのパラメーターは手動で調整することもできます。
指向性ライトの色と強度の変更、光源の形状の調整(円形または長方形にする、伸ばす、または大きくする)が可能です。また、光源のエッジをソフトにすることもできます。

光源をオブジェクトより小さくすると、照らされたオブジェクトを光線が通り抜けないので、影がシャープになり、輪郭がより鮮明になります。光源が大きいほど影が柔らかくなります。この場合、光線はオブジェクトのすべての側面を通過し(下の図では赤で示されています)、多数の影が作成されます。これらの影は、反対方向から照射される光線によってソフトになります。


太陽と空
太陽光は、特別なタイプの指向性ライトです。設定のプロセスは通常の指向性ライトにとても似ていますが、このライトでは、高さに応じてカラーが自動的に変更されます。水平線に近い(高さの値が低い)場合、夕日をシミュレートするために徐々に暖かみが加わります。プリセットを使用してカラーを変更することもできます。一方、曇り具合はシャドウの柔らかさに影響します。

現実世界では通常、太陽光は空と一体で巨大な拡散光源となります。唯一の例外は、月のような大気のない場所です。

環境光を使って空を再現できます。また、空の特徴を生かした環境光も使用できます。次に、(Dimension で作られた)太陽光の位置を、環境光で撮影された太陽に合わせる必要があります。これは、球体を作成して、その球体にメタルのマテリアルを割り当てることで簡単におこなうことができます。これにより、環境の反射をリアルタイムで得られるので、「ライトをポイントに向ける」を使用して、太陽光と太陽の位置合わせることができます。
曇り空の特徴を生かした環境光を使用している場合は、曇り具合のプロパティを使用して、これらの条件により近い状態にできます。

太陽光と空の環境光を合わせたら、グローバルの回転プロパティを使用してこれらを同時に回転できます。
オブジェクトベースのライト
マテリアルの発光プロパティをオンにして、オブジェクトを光源にすることができます。これにより、電球、ネオンライト、ソフトボックス、あらゆるタイプの画面やディスプレイなどのオブジェクトを作成できます。
このタイプの発光を使用する主な利点は、照度の減衰です。これにより非常に自然な結果が得られます。これは、製品のビジュアル化や他のスタジオベースのシーンで非常に便利です。

変形ツールを使用して、発光オブジェクトを拡大または縮小することで、影の柔らかさを制御できます。大きくすると、明るさも強くなります。

以前に説明した種類のライトとは異なり、これらのライトでは、単色の他にテクスチャも利用できます。テクスチャはマテリアルのベースカラーに付加でき、光の強さは発光スライダーで制御します。

効果的な 3D 照明の例
プロダクト照明

プロダクトショットの照明を設定する撮影テクニックは数多くあります。ここでは、最も一般的に使用される設定の 1 つである 3 点ライトシステムを使用します。
この設定は、次の 3 つのライトで構成されます。
1.キーライト:主光源として使用します。ほぼカメラの方向から光が当たります。

2.リムライト:キーとは反対側の方向から照らして、対象物のシルエットを見せるために使用します。

3.フィルライト:比較的弱い光で、暗い部分を補う役割をします。これは、前の 2 つのライトが届かない部分に使用されます。

Dimension では、2 つの方法で 3 点ライトを作成できます。1 つは指向性ライトを使う方法(シーンに個別に追加する、または 3 点ライトのプリセットを使う)、もう 1 つは発光オブジェクトを使用する方法です。


クリエイティブな照明

クリエイティブな照明は、物理的な精度が主な目標ではない場合に使用します。これにはあらゆる種類の抽象シーンや超現実シーンが含まれ、私たちの想像力を際限なく発揮することができます。
上の例のアイデアは、キャンディ、パステルカラー、滑らかな表面といった夢のような環境を描くというものでした。照明システムは、3 枚の発光プレート(サイドに 2 枚、下から光るメインライトが 1 枚)で構成されています。発光プレートはすべて非現実的に大きく、非常に滑らかなシャドウとハイライトを生み出します。光源が色付けされ、その色がシーン内のオブジェクトに割り当てられたマテリアルに届きます。
シーンの対象物(パイプ)は、壁のジオメトリで完全に囲まれています。これにより、光線が前後に跳ね返り、面白い混ざり方になります。一般的に、寒色トーンと暖色トーンを対比させると、魅力的なコントラストが生まれます(このテクニックはポートレート写真で使用される場合があります)。

屋内ビジュアライゼーション

3D の屋内ビジュアライゼーションを作成するには、一定の規則に従います。これにより、ほとんどの場合に良い結果が保証されます。こういった場合は、自然光のみを考慮します(ランプのような人工の光源は考慮しません)。
第一に、そして一番重要なことですが、このようなシーンは閉じた環境にある必要があります。実際の生活と同様に、部屋には壁、床、天井、窓が必要です。これにより、光が窓を通り抜け、(レイトレーシングと呼ばれるプロセスを通して)周囲に反射します。この動作により、非常に自然な照明が生成されます(例えば、コーナーのような閉塞部は暗くなります)。
シーンはほぼ完全に建築ジオメトリに囲まれているので、光はほんの少ししか見えず、環境光からの反射はほとんどありません。しかしこの例では、実際に独自の環境を構築しています。つまり屋内自体が環境となります。そのため、ライトはオブジェクトや周囲の壁で反射して、シーン内のオブジクトに作用します。オブジェクトは、オブジェクト相互と周囲の壁だけを反射します。しかしながら、空の特徴を持つ環境光を追加することをお勧めします。こうすることで、一定量の拡散する青色のフィルが追加されます。
このライトを設定する最も簡単な方法は、発光マテリアルを含む平面を使用することです。この例では、3 つの平面を使用して、屋内のすべての開口部をカバーします。

光の強さは、平面のマテリアル上の発光プロパティによって制御されます。カラーやテクスチャを追加して、一風変わった影を付ける事もできます。発光マテリアルを使用すると、光の強さの減衰も指定できます。これは、室内の照明にとって非常に重要な機能です。

屋外照明

屋外照明の作成は非常に簡単で、太陽と空ライトシステムを使用することになります(上図を参照)。太陽光を空ベースの環境光と正しく合わせ、方向と曇り具合の値の両方に注意することが重要です。
ここでは、このシーン自体が大きな役割を果たします。魅力的な結果を得るには、光と相互作用する触媒として、シーン内のオブジェクトを使用します。上に示した森のレンダリングでは、オブジェクト(様々な植物、丸太、木)が互いに近くに配置されています。

つまり、オブジェクト間で光が跳ね返るので、複雑なレイトレーシングの相互作用が多く発生します。日陰のスポットは(予想通りに)暗くなり、光が当たる領域は明るいままになります。

この概要説明で、様々な状況における 3D ライトをマスターすることの重要性を示すことができました。読者の皆様は、これでより説得力のある結果を生み出す準備が整ったはずです。
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