この文書は、Adobe InDesign の復元機能について説明します。
通常、アプリケーションがハードウェアまたはソフトウェアのコンフリクト、システムエラー、停電などの理由によって予期せず強制終了した場合には、開いていたファイルの変更が保存されずに失われます。InDesign には、保存していない変更を復元する自動復元機能が組み込まれており、予期せぬシステム障害によるデータ損失からドキュメントを保護します。
InDesign でドキュメントを編集している間、InDesign によって 1 分毎に変更が保存されます。InDesign はドキュメントの変更内容を一時ファイルとして InDesign Recovery フォルダーに格納し、ファイル/保存を選択すると一時ファイルが削除されます。InDesign が予期せず終了した場合、一時ファイルを使用して保存されていない変更点の復元を試みます。
InDesign が予期せず終了した場合、次回起動時にドキュメントの自動復元処理を開始します。自動復元処理では、InDesign Recovery フォルダーに格納されている一時ファイルから、InDesign が終了した際に開いていたドキュメントのデータの読み込みを試みます。
データの読み込みに成功しドキュメントが正しく開けた場合、ドキュメントタイトルバーでファイル名の末尾に「復元」という文字が表示されます(例 : filename 復元.indd)。復元データを含むファイルを保存または別名で保存する際に、ファイルの上書き確認メッセージが表示されます。「はい」をクリックすると元のファイルに復元されたデータが保存され、タイトルバーに「復元」という文字が表示されなくなります。
このセクションでは InDesign Recovery フォルダーの場所と内容について説明します。
フォルダーの内容
InDesign Recovery フォルダーには以下のファイルが保存されています。
- DBTmp<ランダムな英数字の文字列> : InDesign で開いているドキュメントの情報を 1 分毎に保存する一時ファイルです。Mac OS 版では、InDesign Recovery フォルダーと同じ Version <バージョン>-J フォルダー内にファイルが生成されます。
- Default settings : 初期設定を保存するための一時ファイルです。InDesign Recovery フォルダーを参照する際、最初に表示されるファイルです。
- RecoveryData : 開いているすべての InDesign ドキュメントおよび破損したドキュメントの完全なパス名を含むインデックスファイルです。InDesign が強制終了した後にファイルを移動またはファイル名を変更した場合、復元できなくなります。
注意 : 復元が必要なドキュメントを異なるコンピューターで開いた場合、InDesign は RecoveryData ファイルのデータを検索できず、強制終了する前に保存されたデータを復元できません。このため、InDesign が予期せず終了した場合は、InDesign を再起動してすべてのドキュメントを復元し、保存することを推奨します。
- ProtectiveShutdownLog : アクセス違反によって InDesign が強制終了した場合に生成されるファイルです。ワードパッドなどのテキストエディターで開いて、日時やエラー内容、プラグインなどの情報を確認することができます。このログファイルは、問題の原因となる特定のプラグインを確認する際に役立ちます。
フォルダーの場所
InDesign Recovery フォルダーは、ユーザーアカウントごとに作成されます。InDesign 起動時に InDesign Recovery フォルダーが存在しない場合は自動的に再作成されます。
- Windows Vista 以降 : C:\Users\<ユーザー名>\AppData\Local\Adobe\InDesign\Version <バージョン>-J\ja_JP\Caches\InDesign Recovery
- Windows XP : C:\Documents and Settings\<ユーザー名>\Local Settings\Application Data\Adobe\InDesign\Version <バージョン>-J\ja_JP\Caches\InDesign Recovery
- Mac OS : Macintosh HD/ユーザ/<ユーザー名>/ライブラリ/Caches/Adobe InDesign/Version <バージョン>-J/ja_JP/InDesign Recovery
※ Mac OS X 10.7 以降では、初期設定でユーザーのライブラリフォルダーが非表示になっています。ライブラリフォルダーを開く方法については、こちらを参照してください。
InDesign によるドキュメントの自動復元が可能な場合、特別な操作は必要ありません。復元したドキュメントに破損したデータが含まれていて開くことができない場合は、エラーメッセージなどが表示されずに InDesign が強制終了することがあります。InDesign でドキュメントの自動復元中に問題が発生した場合、次のようなメッセージが表示されます。
通常のアプリケーションメッセージ
- 「自動復元を開始しますか?」

このメッセージが表示された場合、1 つまたは複数の文書が破損し、復元を必要としています。破損に関する説明は表示されません。
ファイル固有のメッセージ
- 「"<ファイル名>" が見つかりません。ドキュメントの復元を延期しますか?」
このメッセージは、ドキュメントが削除されたか、移動またはファイル名が変更されたことにより、InDesign がドキュメントファイルを検索できない場合に表示されます。または、ドキュメントが保存されているボリューム(サーバー)が使用できない場合にも表示されます。
- 「[File name] could not be recovered because it had been changed. ("<ファイル名>" は変更されたため復元することができませんでした。)」
このメッセージは、復元済みのドキュメントがネットワーク上に保存されており、ローカルコンピューター上の一時ファイルと情報が一致しない場合に表示されます。
- 「Cannot open 'unknown document.' Database error information not available. ("不明なドキュメント" が開けません。データベースエラーの情報が利用できません。)」
このメッセージは、ドキュメントの一時ファイルが破損しているか見つからない場合に表示されます。最後に保存したバージョンのドキュメントを開ける場合があります。
- 「[File name] is damaged beyond any possibility of recovery. ("<ファイル名>" は復元の域を越えて破損しています。)」
このメッセージは、InDesign ドキュメントが破損しているため復元できない場合に表示されます。
- 「[File name] may be damaged. Do you want to open it anyway? ("<ファイル名>" は破損している可能性があります。開きますか?)」
このメッセージは、ドキュメント内の不一致によって強制終了する可能性がある場合に表示されます。ドキュメントを開く場合は、新規ドキュメントにコンテンツをコピー&ペーストし、新規ドキュメントで編集を行います。
復元オプションの選択
ドキュメントの自動復元メッセージが表示された場合、「はい」、「いいえ」または「キャンセル」のいずれかを選択できます。
- 「はい」をクリックした場合 : ドキュメントの復元は継続されますが、RecoveryData ファイルのドキュメント一覧に警告が残ります。次回ドキュメントを開く際に InDesign は再度復元を試みます。
- 「いいえ」をクリックした場合 : ドキュメントの復元は継続されますが、RecoveryData ファイルのドキュメント一覧から警告が削除されます。InDesign によって再度ドキュメントの復元が行われることはありません。
- 「キャンセル」をクリックした場合 : すべてのドキュメントの復元処理を停止(延期)します。InDesign の次回起動時に、再度ドキュメントの復元を試みます。
注意:
注意 : ドキュメントを開くことができた場合にファイル/復帰を選択すると、一時ファイルによる復元データが破棄され、InDesign が強制終了する前の最後に保存した状態に戻ります。