シンボルは、ドキュメントの中で何度でも使用できるアートオブジェクトです。例えば、花のシンボルを作成すると、作成したシンボルのインスタンス(コピー)をアートワークに何度でも追加できます。複雑なオブジェクトを何回も作成する必要はありません。各シンボルインスタンスは、シンボルパネルまたはシンボルライブラリ内のシンボルにリンクしています。シンボルを使用すると時間の節約になるだけでなく、ファイルサイズを大幅に削減できます。
ダイナミックシンボルではマスターシェイプを共有できますが、シンボルの各インスタンスの外観を動的に変更できます。マスターシェイプが変更されると、シンボルのインスタンスは新しい変更を受け取る一方で、個々の変更も維持されます。
シンボルは、SWF および SVG の書き出しにも対応しています。Flash に書き出す場合は、シンボルの種類をムービークリップに設定できます。Flash ファイルに変更した後で、必要に応じて別の種類を選択することもできます。Illustrator で 9 スライスの拡大・縮小機能を有効にしておくと、ユーザーインターフェイス要素として使用するシンボルを正しく拡大または縮小できるようになります。
ここでは、プロジェクトまたはアートワーク全体でシンボルが一貫して表示される必要がありますが、一部のシンボルは異なる属性または外観を表す必要がある場合があります。
例:アパレルデザイナーは、様々な配色で、または複数の色を組み合わせる必要のある新しいシャツをデザインするとします。このシャツをダイナミックシンボルとして定義し、配色を表すのに必要なカラーを適用しました。シャツの襟の形状を変えるなど、シャツのデザインを更新する必要がある場合、シャツのシンボルを編集すると、シャツのすべてのインスタンスは自動的に更新される一方で、個別に適用された独自の配色はそのまま維持されます。
ダイナミックシンボル機能は、マスターシンボルとの関連付けを維持しつつ、インスタンスで外観のオーバーライドを使用できるようにすることで、シンボルをより強化することを目的としています。外観の編集には、カラー、グラデーション、パターンが含まれます。
ダイナミックシンボルを使用する利点
- ダイナミックシンボルのインスタンスは、ダイレクト選択ツールを使用して変更できます。
- インスタンスの外観が変更されても、その変更はマスターシンボルとの関係に影響しません。
- マスターシンボルの外観に対する変更は、すべてのインスタンスに反映されます。ただし、インスタンスに対する個々の編集も維持されます。
- ダイナミックシンボル内のネストされたシンボルを別のシンボルに置き換えることができます。このため、より柔軟にシンボルをカスタマイズできます。
- 選択/共通コマンドを使って、ドキュメントで使用できるすべてのダイナミックシンボルを選択することができます。
注意:
ダイナミックシンボルを以前のバージョンの Illustrator で開くと、シンボルが分割・拡張されます。
シンボルを配置した後、アートボード上で配置したシンボルのインスタンスを編集することができます。必要であれば、編集したインスタンスを使用して元のシンボルを再定義することもできます。シンボルツールを使用すると、複数のシンボルインスタンスを一度に追加したり操作したりできます。

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注意:
初期設定では、選択されたアートワークが新規シンボルのインスタンスになります。アートワークをインスタンスにしない場合は、Shift キーを押しながら新規シンボルを作成します。また、新規シンボルの作成時に新規シンボルダイアログボックスを表示しない場合は、Alt キー(Windows)または Option キー(Mac OS)を押しながら新規シンボルを作成します。これにより、Illustrator では、「新規シンボル 1」などが初期設定のシンボル名として使用されます。
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シンボルにピクセル整合プロパティを適用するには、「ピクセルグリッドに整合」オプションを選択します。詳しくは、ピクセルグリッドへのシンボルの整合を参照してください。
注意:
シンボルパネルで、ダイナミックシンボルは、アイコンの右下隅に小さいプラス記号が表示されます。
シンボルは、パス、複合パス、テキストオブジェクト、ラスタライズ画像、メッシュオブジェクト、グループ化されたオブジェクトなど、Illustrator のほとんどのオブジェクトから作成できます。ただし、リンクされたアートや一部のオブジェクトグループ(グラフのグループなど)からシンボルを作成することはできません。
注意:
Illustrator と Flash の間でシンボルを効果的に使用する方法に関するビデオについては、www.adobe.com/go/vid0198_jp を参照してください。

9 スライスの拡大・縮小(Scale9)機能を使用して、グラフィックスタイルシンボルおよびムービークリップシンボルのコンポーネントスタイルの拡大・縮小を指定できます。このタイプの拡大や縮小は、グラフィックやデザイン要素に一般的に適用される拡大・縮小機能と異なり、ユーザーインターフェイス要素として使用するのに適したムービークリップシンボルを作成できます。
シンボルは、グリッド状のオーバーレイで 9 つのセクションに分割され、各領域が個別に拡大または縮小されます。画像内のコーナー以外の領域は必要に応じて拡大または縮小(伸縮ではない)されますが、シンボルの視覚的な整合性を損なわないように、コーナーの領域は拡大や縮小はされません。
9 スライスの拡大・縮小用グリッドは、編集モードでのみ表示されます。初期設定では、グリッドのガイドは、シンボルの幅と高さそれぞれの両端から 25 %(つまり 4 分の 1)の箇所に配置され、シンボルに自動的に添付された点線として表示されます。
注意:
Flash で 9 スライスの拡大・縮小を使用する方法の詳細については、Flash のヘルプを参照してください。Illustrator で 9 スライスの拡大・縮小を使用する方法に関するビデオについては、www.adobe.com/go/lrvid5210_ai_jp をご覧ください。
Illustrator では、回転、シアーおよび複雑な変形が適用されたシンボルに 9 スライスのグリッドを作成できます。シンボルを拡大または縮小する場合、シンボルの 9 つの領域はすべて個別に拡大・縮小できます。
注意:
このオプションは、新規シンボルの作成時にシンボルオプションダイアログボックスで有効にすることもできます。
他のオブジェクトと同じように、シンボルインスタンスに対しても移動、拡大や縮小、回転、シアー(歪み)を適用できます。また、透明やアピアランス、およびグラフィックスタイルの各パネルからの操作の実行や、効果メニューのどんな効果も適用することができます。ただし、シンボルインスタンスの個々のコンポーネントを編集する場合は、先にシンボルインスタンスを分割・拡張する必要があります。分割・拡張を行うと、シンボルとシンボルインスタンス間のリンクが切断され、インスタンスが通常のアートワークに切り替わります。
シンボルを含む、オブジェクトの選択、整列に関するビデオについて、www.adobe.com/go/vid0034_jp および www.adobe.com/go/vid0035_jp をご覧ください。
注意:
シンボルパネルで、ダイナミックシンボルは、アイコンの右下隅に小さいプラス記号が表示されます。
注意:
別のシンボルによるシンボルインスタンスの置き換え、シンボルインスタンスの分割・拡張時のリンク解除、および変形のリセットのオプションは、遠近描画のシンボルでは動作しません。
注意:
ダイナミックシンボルを以前のバージョンの Illustrator で開くと、シンボルが分割・拡張されます。
注意:
シンボルパネルでシンボルを複製する場合、例えば既存のシンボルに基づいて新規シンボルを作成する場合は、インスタンスでなくシンボルを複製します (シンボルパネルの概要を参照してください)。
注意:
このオプションは遠近描画のシンボルでは動作しません。詳しくは、遠近描画へのテキストとシンボルの追加を参照してください。
シンボルのアートワークを変更してシンボルを編集するか、シンボルを新しいアートワークで置き換えてシンボルを再定義できます。シンボルの編集と再定義を行うと、シンボルパネルのシンボルだけでなく、アートボード上のシンボルの全てのインスタンスに変更が適用されます。
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アートボードの左上隅またはコントロールパネル
にある編集モードを解除ボタン
をクリックするか、Esc キーを押して、編集モードを終了します。
シンボルにピクセル整合プロパティを適用することもできます。詳しくは、ピクセルグリッドへのシンボルの整合を参照してください。
注意:
選択したアートワークが自動的にシンボルのインスタンスになります。選択したアートワークをシンボルインスタンスにしないようにするには、Shift キーを押しながら、パネルメニューの「シンボルを再定義」を選択します。
注意:
パネルメニューについて詳しくは、パネルメニューの使用を参照してください。
シンボルライブラリは、プリセットシンボルの集まりです。シンボルライブラリを開くと、シンボルパネルとは別の新しいパネルが表示されます。
シンボルライブラリでは、シンボルパネルと同じようにシンボルを選択、並べ替え、表示することができます。ただし、シンボルライブラリでは、シンボルの追加、編集、削除を行えません。
シンボルパネル(ウィンドウ/シンボル)またはコントロールパネルを使用すると、ドキュメントのシンボルを管理できます。シンボルパネルには、様々なプリセットシンボルが用意されています。シンボルライブラリからシンボルを追加することも、作成したライブラリを追加することもできます。プリセットシンボルの使用について詳しくは、シンボルライブラリを参照してください。
シンボルパネルでシンボルを複製、つまりコピーすると、既存のシンボルインスタンスを使用して新規のシンボルを簡単に作成できます。
シンボルのコピーを作成するには、シンボルパネルのシンボルを選択して、パネルメニューから「シンボルを複製」を選択するか、シンボルを新規シンボルボタンにドラッグします。
注意:
アートボード上のシンボルインスタンスを複製する場合、例えばシンボルを拡大や縮小、回転した後で、同じ変更を加えたインスタンスを追加する場合は、この編集したインスタンスを複製します(シンボルインスタンスの操作を参照してください)。
Illustrator のシンボル基準点は、Adobe Flash Professional のものと似ています。基準点は、シンボルアートの原点です。この機能により、Illustrator と Flash 間の相互運用性が向上しました。
シンボルを作成するときに、シンボルバウンディングボックスの境界上の 8 つの点または中心のいずれかから基準点を選択できます。シンボルの編集モードと標準モードでは、シンボルインスタンスが選択されていると、基準点が十字の図形で表示されます。編集モードでは、アートワークを基準点のマークにスナップできます。
変形パネルメニューの「シンボル基準点を使用」オプションはデフォルトで選択されています。シンボルインスタンスが選択されていると、変形パネルでは基準点の座標系が表示されます。シンボルインスタンスの変形操作はすべて、シンボルアートの基準点を基準にします。
シンボルインスタンスに適用された変形は、「変形をリセット」オプションを使用してリセットできます。詳しくは、変形のリセットを参照してください。